【R18】隙間
「股間がキツイ!」
「そりゃキミが無駄に勃起してるからな!」
ドラルクそしてロナルドという順番で、壁の隙間に二人して挟まっていた。挟まっている理由はアレだ。シンヨコに出没したポンチ吸血鬼の所為だ。なんでも、特定の状況下にいる二人を壁と壁の隙間に転移させ身動きさせなくするという能力らしい。いい加減にしてくれ、と、ロナルドは願う。が、しかし。
ロナルドの前にはドラルクがいて、ドラルクの背後にびったりと張り付いていた。密着しないように踏ん張る隙間もないから、もうびったり。そして、あろうことか困ったことに、ロナルドの股間がドラルクの尻に押し付けられていた。とてつもなくピンチな状況で、どうにかロナルドは無心になろうとした。無心にならなければいけなかった。なのに意識というものはそうはいかないもので、この狭い空間を更に圧迫するようにチンチンが大きくなっていた。
だって、ドラルクの体と密着しているのだ。貧相でガリガリで骨と皮だけど、実は儚い細さが目についていたりする。それから、バァちゃんちみたいな香りがほど近くにあるし、ずっと吸い込んでいたい。それから、手入れが行き届いた黒の髪、そして背後からしか見えない尖った耳の裏側とか、目に毒なものがロナルドの前に全部、全部あるのだ。
「ワタシは何もしてないのに……どうしてそうなっているのだッ!」
ドラルクは文句を言うが、だって仕方ないじゃないかとロナルドは心で叫ぶ。惚れてる相手と密着して、何も変化を来さないほど成熟していないのだ。
「う、う、う、う、うるせぇッ!」
砂にしてやりたい。八つ当たりもいいところだが、ロナルドはドラルクを砂にしたかった。そうすればこんな隙間からの脱出も叶うはずなのだが、どうやらこの隙間は特殊な空間らしい。なのでドラルクは砂になれずに硬直したままでいる。
しかし、ロナルドが勃起している分、それだけ隙間がなくなっているということだ。もうドラルクには伝わっているように、チンチンはギンギン状態である。平常時ならばフニャフニャなので、コンパクトにもできただろう。だが、惚れた相手の尻にチンチンを押し付けるというこの状況が、ロナルドのチンチンをフィーバーに至らしめていた。
どうする? と、ロナルドは考える。おそらくだが、このままではオチンチンランドは開園状態のままだ。オチンチンランドを閉園するためには、一つの方法としてヌくという手段がある。男は誰しも賢者モードとなれば、チンチンも平常となるのが摂理というものなのだ。だからこそロナルドは決意する。この隙間でできること。それは、ドラルクの尻を使って一発コトを構えるということを。
「悪ぃ、ドラ公……」
ゆらり、と、ロナルドは壁とドラルクに挟まれた空間で下半身を揺らした。下から上へと動かしたならば、ズボンの中で窮屈に膨れているチンチンが刺激されて気持ちがいい。
「ひぃッ! な、何を考えているッ! ヤメたまえッ! コラッ! このイカレゴリラ!」
ロナルドが何をしようとしているか、ドラルクには丸分かりだ。が、こうでもしなければずっと窮屈かつキツイままでもあるので、これは非常時の緊急措置としてもらいたい。ぐ、と、突き上げる軌道を描けば、ズボンの中のチンチンの位置も少しは楽なものとなる。
「……ッ……ヤメ、ろ……キミ、何をしているのか……自覚はあるんだろうな?」
ドラルクの言葉は尤もだ。これでロナルドがドラルクに対して邪な想いを抱いていないのであれば、人生の汚点どころではない。が、ドラルクに惚れている自覚があるロナルドにとっては、これは好機にすら感じられた。何しろズリネタとして妄想するドラルクでの尻ズリではなく、緊急とは言え大義名分のある現実でのドラルクでの尻ズリ。これを好機と言わずして何と言うのだ。
「いいから、黙ってろッ!」
ぐっ、ぐっ、と、ロナルドはドラルクを牽制して腰を突き上げる。チンチンにドラルクの薄い尻が触れ、頼りない硬さがまた気持ちいい。見下ろしてもチンチンの様子が見れないことがロナルドにとってはもどかしいが、それでも体を揺すればドラルクの尻で深い快楽を得ている。黒のスラックスに包まれた、ドラルクの尻はどんなだろう。いつも洗濯物を干す際に見る、ドラルクの下着。子供用かと思うほど小さなボクサーだから、きっと小さいに違いない。
「だめッ! ダメだ! ロナルドくんッ!」
小馬鹿にするような雰囲気が鳴りを潜め、ドラルクが本気でロナルドを制している。が、ロナルドは止まらない。ドラルクの尻の割れ目をチンチンで探り当て、切っ先から根本までをドラルクの尻の割れ目の終端から先端へと駆け上る。狭さを利用してもう少し強めに擦れば、それだけ刺激は大きく快楽は強くなった。
「……は……ぐッ……ぐ……」
ぐり、ぐり、と、一層強い刺激にしたくて、ロナルドは更に全身を揺する。と、それに歯向かうのはドラルクで、あれだけ頑なに動かずにいたクセに僅かの隙間で首を横に振っていた。
「だめ、だ……ダメだって、ば! ロナルドくんッ! ロナルドくん!」
けれどそのドラルクの反抗が、ロナルドには唆る。逃げ出せない隙間で、ドラルクは「だめ」と言う。どうして「だめ」なのかも言わずに、声を震わせてロナルドを制止しようとしていた。
「一発……一発、ヌけば……隙間が、できるから」
そして、ロナルドとしては、惚れた相手の体を堪能できるから。だから今は黙って、ロナルドの好きなようにされてほしいのに。
「んぅッ……ひ、ぁ……だ、めぇ……」
ロナルドが動けば動くほど、ドラルクの声が甘く、柔くなっていく。これは、もしかして、もしかしなくとも、ドラルクも感じているという状況なのではなかろうか? そう気付いてしまったのなら、ロナルドはもう止められない。このまま駆け上がるのみと、とにかく腰を突き上げる。
「ろな、るどくん……ろなる、ど、くん……だめ……やめ、て……」
そんな震えた艶めかしい声が、ロナルドの抑止などになるものか。ロナルドは短く息を吐きながら、ドラルクの尻にチンチンを押し付け擦り付ける。
(挿入てぇ……)
チンチンを擦り付けた先は、ドラルクの小さく骨ばった尻。挿入するとなれば、その先は尻の割れ目の間に潜む小さな小さな孔だ。ドラルクはそもそもの排泄行為がない。無用の長物と化したソコを、ロナルドは妄想の中でいつも性器に変えていた。
(アヌス……ッて言うんだっけ……前、読んだ……)
これでも作家業なので、読書は意外にもしている。その中で、ヘンなのセレクトだが、某黒い本も読んだ。ホンキで興味が湧いただけだったが、読んだ。その時に【アヌス】という名称を智識として蓄えた。無駄な智識だけど。
(ドラこうの……アヌスにブチ込んで……ズポズポしてぇ……)
最低な妄想に浸って、ドラルクの尻にチンチンを往復させていく。挿入は叶うはずもないのだが、それでもドラルクの体でヌくという悦楽と背徳はロナルドの意識を淫らなものにした。
(……んで……射精すんだ……ドラこうの、ナカに……俺のザーメン……たっぷり、注ぐ……)
性的な気持ちよさを追いかける者は、総じて淫らな怪物に成り果てるのかもしれない。現実では起こり得ないことだからこそ、ロナルドは淫奔な存在となる。ここで意識を振り切らなければ、多分一生、ドラルクとこんなことをすることもないだろう。
(好き……好き、なんだよ……俺は、どらこうに惚れてんだ……)
それを言えば、ドラルクはロナルドを嘲笑する。そして、「ここには居られない」とロナルドを罵って、出ていくだろう。だから、言わない。ドラルクとの生活を失いたくないからこそ、言わない。
(……俺のザーメン注いだら……どらこうのナカに……俺が、残る、かな……)
馬鹿な男の、短絡的な考えだ。けれどもそれはあまりに甘美で、ロナルドは浸っていたくなる。
「……どらるく」
呼びかけて、僅か下を見下ろす。血色が悪いはずの耳の裏側が、これでもかと赤くなっていた。
(かわいい)
尖った耳の先が、へにょりと下を向いていた。いつもなら強気で天を射すというのに、この時ばかりは項垂れている。そんな耳先が愛おしくて、ロナルドは堪らずに舌を伸ばしていた。
「ひ! う……」
小刻みに震える体は、ロナルドに恐れ慄いている。なのに抵抗出来ないからこそ、ドラルクはロナルドの餌食だ。恐怖にドラルクの体が強張り、きゅ、と、尻の割れ目が締まる。チンチンを小気味よく挟まれて、ロナルドは悦楽に腰を震わせた。
「あ……ぐ……射精、るッ!」
チンチンの根本、ぶら下がる二つの陰嚢がカッと燃え上がる。瞬間的に沸騰して、奥底から迫り上がる感覚がロナルドに花開いた。
「あうッ! やだ! だめ! だめ!」
ドラルクが逃げようとしても、この隙間ではできるものではない。ドラルクがいくら「だめ」と言い張っても、ロナルドは止まらなかった。ドラルクの尻の割れ目の終端に近い場所。そこにチンチンの切っ先を押し付けて、底から迫る精液を噴き上げる。
びゅるるるるる!
普段の自慰で放つ量が少なく感じられるほど、大量の精液を吐き出した。現実のドラルクで尻ズリした興奮もある。そして、なによりもドラルクが感じている様子があったこと。それはロナルドにとっては、最高の愉悦だった。
ロナルドはとにかく精液を吐き出す。吐き出してしまえば、チンチンは平常になるはずなのだ。そうすればまた隙間ができて、痛みに耐えることはしなくてよくなる。それにドラルクも多少は楽になって、ここから出る希望だって見出せるはずだった。だが、しかし。
「あ……う……だめ……ダメ……滲んじゃ、う……」
ロナルドが射精した精液が、ロナルドの下着それからズボンに染み込み、ドラルクのスラックにも移っていく。それをドラルクは「だめ」と、ピスピス泣いていた。
「なんで……ダメ、なんだよ……」
人間、「だめ」と言われたら余計にしたくなるものである。ロナルドはわざと腰を揺らして、ドラルクのスラックスに精液で濡れた部分を押し付けた。ぐちゃり、ぐちゃり、と、大量に放った精液をドラルクに受け渡すために。
「……ぅく……だって……だっ、て……ワタシ、は……」
言い淀むドラルクに向けて、ロナルドはもう一度チンチンの切っ先を突き付ける。射精すれば治るかと思っていたが、チンチンはどうしてかまだギンギンなまま。だからもう一度と言わず、ドラルクの尻の割れ目の終端にチンチンの切っ先を押し付けた。
「ひ……あぁッ! あうッ!」
明らかにドラルクの反応が違う。尻の割れ目で尻ズリしていたときと違って、確実に感じて喘いでいる。これはドラルクも興奮しているということで、ロナルドは興味を隠せずにいた。
ドラルクが興奮しているなら、確かめたい。それにまだチンチンが勃起したままなので、楽にもなりたい。では、どうするか。ロナルドはどうにか腕を動かして、ドラルクのスラックスを留めるベルトを探り当てる。ジリジリとベルトを動かしたのなら、どうにかバックルを緩めていた。
「な……何……を……」
「俺のが……染みるのが……いや、なんだろ?」
だったら脱いでしまえばいい。脱いでしまえば、染みて滲むこともない。が、やはりドラルクは抵抗を始める。
「だ、めッ! それは、もっと、ダメ!」
だが、ベルトの留めを失ったスラックスなど脆いものだ。それにロナルドの膂力に敵うものでもない。ズリズリと下着ごと爪先へとずらされたスラックスは、最も簡単に床に落ちてしまっていた。
「……あ……う……」
何も身につけていないドラルクの尻に、ロナルドはチンチンを押しつけている。こうなってしまったら、ロナルドは自分のチンチンが窮窟に下着の中にあることがもどかしい。布数枚分の余裕を利用してドラルクを僅かに持ち上げ、ずらす。ドラルクは爪先すら床に届かないことになって、怖さに慄いていた。
そんなドラルクを全身で支えつつ、ロナルドは楽になるべく股間に手を伸ばす。ズボンの合わせを解くことは困難だが、股間のジッパーを下ろすことは容易と気付いた。じりり、と、ジッパーを下ろし、前空きタイプの下着であったことを感謝する。下着のボタンを外せば、隙間から未だ勃起したチンチンを取り出すことに成功した。
解放を得たチンチンは、萎えるどころか更に質量を増している。チンチンの切っ先にはドラルクの尻が迫っていて、直接尻ズリができるまたとない好機だ。このまま本懐を遂げることすらできてしまうのではないか。そんな考えにも駆られて、ロナルドは己を試すようにドラルクを支える力を緩めた。するとドラルクの体が沈んで、ロナルドのチンチンの切っ先に触れる。触れた先の感触に、ロナルドはチンチンを更に大きくさせることになった。
「ひんッ!」
ぬちゅ、と、チンチンの切っ先に濡れた感触が絡む。確かにドラルクに向けて射精はした。そして、布に染み込んだ精液を押し付けはしたが、ここまでの量ではない。なのに、ドラルクに触れている場所があり得ないほどに濡れている。一体これはなんだと確かめたくて、ロナルドはチンチンの先端を前後に動かしてみた。ぬりゅ、ぬりゅ、と、粘性の高い何かで溢れていて、チンチンの切っ先がなめらかに滑っていく。
「あッ……あ……あん……らめ……」
一体、ここは何だ。チンチンの切っ先で丹念に探り、調べる。尻の割れ目の終端から、ドラルクのチンチンがある場所まで。短い部分が未知の世界となっており、ドラルクの体が異質なものだとは理解した。
「……だ、め……かき、まぜない……で……あ……う……」
ドラルクがあからさまに、逃げようとしている。けれど、挟まれた上ではどうにもならずに泣いていた。怖がるドラルクを宥めてやりたいとは思う。だが、ロナルドはそれ以上に、ドラルクを逃したくないと思ってしまった。
チンチンを動かし、そして押し込むことができる場所があることを知る。ドラルクは半狂乱で逃げようとするが、やはり叶わなかった。
「ダメ! ロナルドくん、ダメ! そこは! そこは、デキ、ちゃう、から!」
ドラルクが言う「デキちゃう」の意味を知らぬほど、幼くはない。そこは尻の割れ目にあるアヌスとは違う場所。そこは普通ならば女性しか持ち得ない場所だが、何しろドラルクは吸血鬼だ。吸血鬼は人とは違う種族なのだから、こんな体の者もいるのだろう。
「……だ、め……ひ、にん……しない、と……ひにん……」
「しなくて、いい……なぁ……俺の子、孕んでくれよ……産んで、くれよ」
ドラルクの中に精液を注いで、痕跡が残ったらいい。そんな妄想をしながら、ロナルドは己を慰めてきた。だが、それが現実になるのなら、タガなんて外れるものだ。
「なぁ、どらこう……」
好きだと言えば、逃げていく。けれど、逃げることができない理由をロナルドが植え付けることができるなら。
「好きなんだ……テメェに、惚れてんだよ」
ぐ、と、腰を突き上げたら、ドラルクの抵抗はなかった。それに「ダメ」な理由は、子供ができてしまうからで、そうでなければ「いい」ということでもある。嫌われているからでないのであれば、ロナルドが突き進まない理由がない。それどころか、突き進まなくてはならないのだ。
「あ……ん……ぐ……ロナル、ドくん……ろな、る、ど、くん……」
ドラルクに呼ばれて、ロナルドは突き進む。ドラルクの秘された花園を堂々とチンチンで踏み荒らし、ドラルクという蕾を咲かせて手折ることこそロナルドの本懐。極限まで膨らみきったチンチンをドラルクの胎内に突き入れ、最奥まで犯し抜いた。
「あぁぁッ! ……ひぅ……す、き……ろな、るろ、くん……すき、な、の……」
小さく、途切れ途切れの告白が、あまりにいじましい。お互い隠してきたものを晒したなら、もう、怖いものはない。ロナルドは、がむしゃらに腰を振り上げ、ドラルクの胎内を突き上げる。根元まで押し込んで、最奥まで突き進んで叩きつける。そうしてチンチンの切っ先に触れるものを感じて、喜ばずにはいられない。
「どらこう……コレ、子宮、だよな? オマエの……子宮……」
「んぁ……あ……ん……し、きゅう……ろなるどくん、の……あかちゃん、デキる、とこ……」
チンチンが触れる場所に、命が宿る。その命は、ロナルドとドラルクの子だ。二人で望む子だ。
ドラルクの媚肉を掻き分け、突き進み、子宮の底に到達する。何度も何度も繰り返し、押し付け、突き上げ、射精する場所を互いに知らしめる。
「あ、んッ……ろなる、ど、くん……だめ……いっ、ちゃ、う……」
ひく、ひく、と、ドラルクの胎内が揺れて、ロナルドのチンチンを食い締めていた。心地好く最奥へと誘われて、ロナルドは激しく腰を撃ち上げる。にゅぷん! と、ドラルクの胎内にチンチンが飲み込まれて、チンチン全体にドラルクの媚肉に押し寄せられた。蠕動する媚肉に揉まれたのなら、ロナルドとて限界となる。再び陰嚢が燃え盛って、射精への欲求が一気に昂っていた。
「……俺も、射精クッ! 射精、するぞッ!」
地獄の釜が開くように、奥底に閉じ込められていた精液が駆け上る。ぐんッ! と、チンチンが拍動し、射精道が一際太く拡がった。そして迫り来るのは精液であり、ロナルドは己の欲求に従って精液をドラルクの胎内に解き放つ。
びゅぅぅぅぅぅ!
「あぁぁぁぁん!」
精液を胎内で受け止めたドラルクが、愛らしい悲鳴をあげて全身を震わせる。その震えは、ロナルドの精液を飲み込もうとする子宮の痙攣のためのもの。ロナルドが注ぐ精液を飲み干そうと、愛らしく震えている。
「あ……ぐ……どらこ、う……」
「……あ……あん……ろ、なる、ろ、くん……」
デキてくれればいい。けれど、貪欲なもので、まだ足りない。もう、壁は消え去ったけれど、ロナルドはドラルクを両腕に絡めたままでいる。ドラルクがほしい。貪り尽くしたい。孕ませたい。ドラルクを、この腕にずっと抱いていたい。
「どらこう……なぁ、ドラルク……」
「……ん……ろなるどくん……」
追い縋って、押し倒して、それから。唇を触れ合わせて、舌を伸ばして。互いが満足するまで、繋がっていようと決めた。
* * *
「もう! ホコリが多いと思ったら!」
ドラルクは小さな子供を抱えて、ぷりぷりと怒りながら隙間用のモップを突っ込んでいた。掃除はドラルクの仕事だが、ここ最近は腕に抱く子の世話にかかりきりだ。自分がサボったことを怒っているのだが、あまり意味はない。
「すきまぁ? あったか、隙間?」
掃除するドラルクの腕から子供を受け取ったロナルドは、隙間なんてあっただろうかと唸る。ロナルドも子供を抱くことに慣れ、危なげない手つきであやしている。
さて、ロナルドとドラルク。二人して隙間を覗いて、そして互いに顔を見合わせる。何とも言えない顔をしたならば、二人で子供の顔を見た。白銀の髪、赤の瞳、そしてダンピール。ロナルドとドラルクの間に生まれた子は、隙間の出来事なんて知らずに、無邪気に笑っていた。